文系・理系、学生・専門家・社会人、業種に関係なく、現状を判断する上で必要な情報にはエビデンスが求められます。エビデンスとは、実際のデータと論拠の提示が必須です。その論拠となり得るのが、論文です。
なので、誰しもが論文を読めた方が、エビデンスがある判断ができるようになります。
論文は型が決まっているので、その型に合った読み方を知ることで、非常に読みやすくなります。

今回は、論文構成の「はじめに」の読み方について解説していきます。
ここでは、論文とは研究論文や原著論文と言われるものを指します。
はじめにの読み方
「はじめに」には、研究テーマの背景と研究の目的が書かれています。
研究テーマについてよく知らないのであれば、「はじめに」を読むことで、特定のテーマの概要が分かります。
さらに、興味がある論文を効率的に探すことができます。「はじめに」には、特定の研究テーマを語る上で重要な論文が多く引用されています。なので、「はじめに」で書かれている先行研究に興味があれば、引用している先行研究の論文を読めば深く理解できるようになります。ほとんどの論文には引用論文の番号が書かれいるため、論文を探す手間が省けて効率的ですね。
キーワード検索して、闇雲に論文を探すことは、効率が良くない場合があります。
専門領域や論文によって多少違いがありますが、以下の6つのポイントを確認することで、「はじめに」の理解が進み、論文が読みやすくなります。
① 特定領域の問題 |テーマに沿った問題とは?
② 解決方法 |問題に対する一般的な対処方法はこれだ!
③ 注目点 |対処方法だけでは不十分 最新の知見は?
④ ミッシングリンク |現状分かっていないこととは?
⑤ 目的 |分かっていないことを解消したい!
⑥ 発展 |目的達成による効果はなに?
① 特定領域の問題|テーマに沿った問題とは?
特定領域(専門領域)で一般的な内容が書かれている。研究の前置きみたいなものです。
たとえば、少子高齢化、ある病気の治療成績が良くない、物品識別の測定機器の精度があまり良くない、などです。
どんな専門領域でも問題があります。研究とはその問題に対する解決方法を探るための手段です。
② 解決方法|問題に対する一般的な対処方法はこれだ!
専門領域における問題に対する一般的な対処方法が書かれています。ここも、あまり重要ではないですね。書かれていない論文も多いと思います。
たとえば、(少子高齢化に対して)女性に働いてもらう、(病気の治療成績に対して)予防に重きを置いている、(機器の精度に対して)人によるチェックを加えている、などです。
いままでの対処方法では足りない、と言いたいだけなので、重要ではないと思います。
③ 注目点|対処方法だけでは不十分、最新の知見は?
問題に対する対処方法として、今までしていなかったが、最近注目されている方法や、考え方などが書かれています。
たとえば、(少子高齢化に対して)女性が働きやすい環境を整える、(病気の治療成績に対して)予防だけでなく治療方法を確立させる、(機器の精度に対して)深層学習による識別精度が低コストで可能、などです。
④ ミッシングリンク|現状分かっていないこととは?
ミッシングリンクとは、分かっっていることと分かっていることを繋げるために必要だけど、分かっていないことです。下手な説明ですいません。
AであればBだと分かっている(A→B)。そして、CであればDだと分かっている(C→D)。A→B→C→Dだと仮定すれば、BだとすればCであること(B→C)を証明すればよい。この、B→Cのことをミッシングリンクと言います。
①②の知っている情報と、③の新しい情報を論理的に整理すると、分かっていないことが見えてきます。
たとえば、(少子高齢化に対して)保育所や児童保育の拡充によって女性の就業率が変化するかどうか、(病気の治療成績に対して)治療薬が人に対して効果があるかどうか、(機器の精度に対して)深層学習によって精度がどの程度向上するのか、などです。
⑤ 目的|分かっていないことを解消したい!
ミッシングリンクを解消することが目的になります。この目的達成のための研究でなければなりません。当たり前ですが、これは意外と難しいので、注意して読んで下さい。
たとえば、(少子高齢化に対して)保育所や児童保育の拡充によって女性の就業率が変化するかどうかを検証する、(病気の治療成績に対して)治療薬が人に対して効果があるかどうかを調べる、(機器の精度に対して)深層学習による精度を検証する、などです。
⑥ 発展|目的達成による効果はなに?
目的が達成することによる社会的な意義が書かれています。
たとえば、(少子高齢化に対して)保育所や児童保育の拡充によって女性の就業率が上がり、子供の成長と税収の増加が両立できる、(病気の治療成績に対して)治療薬を使用することで入院率を下げることができる、(機器の精度に対して)深層学習を使うことで人によるチェックなしでも高い精度で識別ができる、などです。
研究によって検証された知見は社会に還元されないと意味がないですからね。興味本位で調べてみた、だけでは論文にならないです。



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